ストーリーズ #003
リフォーム会社支店長×シェアハウスオーナー
小関大介さん
地域:山形県山形市他タイプ:主業・副業一体型

誰でも、子どものころ無性に楽しかったことがあると思います。
普段は通らない裏道を探検すること。象はグレーだなんて気にせず、好きな色で絵を描くこと。驚くような機動力で、ほんのちょっとの中間休みにもドッジボールをすること。図書室の本を片っ端から読破していくこと。
小関大介さんが子どものころ楽しかったのは、自分の将来の家の間取り図を描くことでした。
「DIYがすごく好きで。中学生のときもお小遣い全部費やすみたいな。方眼紙を買ってきて、新聞の折り込みに入ってくるハウスメーカーの間取り図を見ながら、自分の将来の家を描くのが楽しくて楽しくてしょうがなかったんです。」
以来、高校、大学、そして就職と、建築の道を歩んできました。
「昔のことを振り返ってみて、なにが楽しかったかというと、間取り図を描いているのが楽しかったわけではなく、将来の自分の家族構成を考えて、『だったらこういう間取りが良いよね』と考えるのが楽しかったんです。」
家をつくることに限らず、その人に合った空間を届けるために。
小関さんは今、住宅リフォームを手掛けるクラシタス株式会社で支店長を務めながら、空き家の持ち主と空き家を使いたい人をマッチングさせるサービスを始めようとしています。
「あのときの趣味を大人にしました、みたいな。」
子どものころ楽しかったことを仕事にした小関さん。ただ、大人になったからこそ、仕事にしたからこそ、新たに見えてくるものもありました。
「空き家に興味を持つようになったのには2つの側面があります。クラシタスの方では持ち家をリフォームすることが多かったのですが、その周りに空き家が多くて、近隣挨拶をしようと思ってもできない。それで、『なんでこんなに空き家が多いのかな』と思うようになったのが1点。」
「あとは、父親が早くに亡くなったんですが、不動産が勝手に相続されていくわけですよね。住宅市場では『2019年問題』と言われたことがありましたが、これからは人口だけでなく世帯数も減っていくんです。でも建物は残っているから誰かに相続されるわけで。そうなってくると、家を持つことが夢だったのが、逆に重荷になってくる。それは大変だと。」
空き家の利活用という新たな目標を抱いた小関さん。
なんと、自分でも古民家を購入(!)したそう。
「空き家の利活用を考えたときに、人口は減っていくので、住宅を住む目的だけで利活用するのは限界があるなと感じまして。だったら、どういう使い方ができるのかなということを自分で試してみようと。」
そこで、小関さんが始めた古民家の活用方法が、「シェアハウス」でした。
住むだけでなく、面白い人が集まっていろいろな意味で「シェア」できることを目指したのが、ここ「つぶ亭」です。
でも、「面白い人が集まるところをつくりたい」という思いはどこから生まれたのでしょう。
「もともとは、空き家を使いたい人と使ってほしい人のマッチングをしようと思ったときに、自分ひとりじゃ無理だと思って。できないとなれば一緒にやる人が必要だなと。IT全然わからないので、IT強い人と一緒にやりたいな、とか。コミュニティは仕事を進める上での武器にできると思うんです。」
なるほど、空き家の活用事例をつくることでブランドを強めつつ、チャネルも増やせる。複数の肩書を持つことの効果は大きいように思います。
「会社で仕事していても、Aというプロジェクト、Bというプロジェクト、Cというプロジェクトとやるじゃないですか。結局、AをやるときにBのリソースが必要だったり、Cのリソースが必要だったり。それと一緒で、つぶ亭で作った人脈でイベントをやって、そこから収益に落とし込むときにはクラシタスの事業にもっていったり。景気が良い時代は会社のお金を使っていろいろできたのかもしれないけど、今はそれができないから、自分で引っ張ってきちゃった方が早かったり、何かやろうと思ったときに、つぶ亭の名刺1枚だけだと難しくても、クラシタスの名刺があると企業としての信用でつながれたりもするので。やることは一緒で、手段が2つあるっていう感じなんです。」
2枚名刺があれば。
「当たり前のことですが、最終的に自分で判断することになるので、これまでの仕事のスタンスでは『検討します』と言うところも即決できるようになりました。取捨選択のスピードが上がりましたね。」
会社の中だったらどこか他人事になってしまっていたことも自分事になる。それは本人にとっても、そして会社にとってもプラスになると感じました。
ただ、それに伴って大変になってくるのが、「自分ひとりの体でどう回していくか」。
「時間が有限で足りないけど、体を3つに割ることはできないので。その中でどうやっていくかっていうのを常に考えながらやってます。それが一番大変ですよね。あとは自分が考えていることが相手に伝わっているかどうかですよね。言ったか言わないかじゃなくて。やっぱり自分が考えていることを相手に伝えてやってもらうのは難しいので。だいぶ任せることに慣れてきましたけど、任せてやれているかっていうと、また別ですよね。自分がやれば簡単で速いんですけど、それをやってしまうと体3つに割らなきゃいけなくなるので。」
自分ひとりでやることも難しいけど、人に任せることにもまた、難しさがあります。
それにしても、自分でやるというのはなかなかハードルが高い気がしますが、小関さんにとってはどうだったのでしょう。
「確かに起業は簡単に出来るものではないですし、資金も決意も要ります。それに、人脈もなければ不安ですよね。家族がいれば尚更、慎重になります。担保されるものが無いと一歩踏み出す事は大きな勇気が必要ですよ。起業されている方からすると『やればいいじゃん』って感じだと思うんですけど、私みたいな超一般人はそうもいかないですね!」
いきなり起業することは難しかったけど、主業があったら挑戦できる。そういう人が増えていったら、もっともっと面白いことが生まれそうです。
やりたいことがはっきりしているという印象の小関さんですが、自分が本当に好きだったこと、やりたいことを棚卸したきっかけがありました。
「一回ハウスメーカーに転職しまして、理想と現実のギャップにより離職したんです。24、5歳の頃ですかね。今となっては自分の未熟さや力不足でしかなかったと良い意味で振り返る事が出来ますが、当時の自分は、大手=優秀な人が集っている!?という変な固定概念や、憧れ、自分に対する変な自信もあったんですよね。ただ、そこで働いた事で仕事の進め方やスタンスに違和感を覚えて、『自分を成長させたりワクワク出来る仕事の環境って何だろう?』と考えさせられました。そんな苦い経験がなければ、今ここにいないかもしれないですね。」
今、小関さんが目指す究極の働き方は、「仕事が遊びで、遊びが仕事」であること。
「親が子供に仕事している姿を見せられないというのは、子どもの将来に影響があると思うんです。出社前と帰宅後の疲れ切っている親の姿しか見ずに子供時代を過ごしていたら、『大人になりたくない』と思うのは当然ではないでしょうか。逆にイキイキと仕事をしている親の姿を見て育った子供は、前向きに将来を考えることができるのではないかと思っています。」
どこでも仕事ができ、出張に家族も連れていけるような働き方をしたいという小関さん。
小関さんの働いている姿を見て、いろんな所に行って、お子さんたちが何か「楽しい!」と思うことがあったら。
そこからまた将来の仕事につながっていくのかもしれないと思いました。
しごとパラメーター
- クラシタス株式会社山形支店長
- シェアハウス「つぶ亭」オーナー
主業



副業


