コラム #027
一風変わった宿代のご縁をつくるゲストハウス 宿泊者(遊人-ゆうじん)募集!
山形県最上町大字満澤でゲストハウスを始めた菅博さん。このゲストハウスは、お金を支払わずに泊まれる仕組みになっています。一体、どういうことなのか、土地の魅力と共に伺ってみました。
「ここ満澤(みつざわ)は、秋田県と宮城県に隣接する静かな中山間の集落です。湧き出る水は『山形名水100選』に選ばれるほどの美しい軟水で、主産業は農業です。温泉が湧き出ていれば、里山の恵みや四季の変化を感じられる表情豊かな土地です。
そのような場所ですから、農業をやってみたい方や田舎暮らしを体験してみたい方には、魅力ある場所だと思います。それに、昨今のテレワーク事情などを考えると、静かな環境で仕事が出来るので、デスクワークのストレス解消という点でも、いい環境だと思います。」
「それで、宿代なんですが……お金ではなく、一宿一飯の恩義じゃありませんが、お手伝いをしてもらうことで完了する、物々交換ならぬ価値の等価交換で良いなと思っています。要は、泊まった分、働いてくださいということですね。例えば、私がやっている養鶏の餌やりや木耳(きくらげ)の水やり、ゲストハウスの掃除や補修の手伝い、冬だったら除雪など、お手伝いをして返してくれればと思っています。中でも、一番やってもらいたいのはSNSなどを使っての情報発信です。」
菅さんは、ゲストハウスの取り組みを始めて、折角、良いものがあるのに知られていないということが一番の問題だと気づいたそうです。以前から、町と協力して若者向けの農業支援に取り組まれたそうですが、そのチラシを作って配布しても、なかなか反応が得られなかったそうです。伝えたい人に届かない、伝えるためには、時代の変化に応じて情報発信の仕方を変えなければいけないと、その大切さに気づいたということでした。
「大切なことは、生産者と生活者をつなぐことだと思っています。具体的にいえば、オーナー制やCSA(地域支援型農業)などにみられる、共に農業(食料)を活かし、共に環境(自然)を活かすことでしょうか。お互いが良好な関係を築くことだと思います。率直な話、満澤に来て楽しんでもらって、ファンになって欲しいということですね。それを、色々な人に伝えて、ファンづくりのお手伝いをしてもらえたらなと思っています。
今は、SNSやYoutubeを介して、これまで隠れていたものが、突然、注目を浴びることがあります。ここに泊まった際には、その体験などを発信して、色々な方に届けてもらい、新たなご縁が生まれてくれればと思っています。それが現代の一宿一飯の恩義になると思います。」
ゲストハウスに宿泊した対価として、掃除や農作業を手伝い、さらにその体験をSNSなどで発信するという他に類をみない試み。秋田と宮城に接する場所なので、旅人の寄り道としても面白い場所かもしれません。
最後に、菅さんは「まぁ、気軽に遊びにきてけろ」と笑顔で締め括ってくれました。静かな隠れ里での暮らしを体験してみたい方は、ぜひ、最上町満澤を訪れてみてください。
(文:池田将友)
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※お試し宿泊体験や短~長期滞在まで、興味を持たれた方は、お気軽にご相談ください。
菅博(かんひろし)さん
1952年生まれ、70歳。満澤集落に生まれ育つ。27歳の時、冒険家の大場満郎さんと中国に研修に出かけた際、自分は何の為に生まれてきたかと思い至る。それから、自給家族とは、安定して暮らせる生活とは、と考え、養鶏を始める。満澤の自然を活かし、養鶏は平飼い有精卵にこだわり、綺麗な水を活かした木耳(きくらげ)の栽培、近年は夏イチゴやホーリーバジルに力を入れている。