コラム #029
将来の予測が難しい現代に必要な働き方-自身の知識から新たな価値を創るナレッジワークとは?
単純労働はどんどん機械化が進み、さらにAIの発展によってさまざまな職種が代替されると言われる現代において、私たちの働き方はどうなっていくのでしょうか。今回のコラムでは、自身の知識によって付加価値を生む「ナレッジワーカー」をヒントに、これからの働き方について考えてみたいと思います。
ナレッジワーカーについて理解するために、まずは反対の概念である「マニュアルワーカー」との違いを整理してみましょう。
マニュアルワーカーとは、単純作業やライン作業などでマニュアル通りに業務に取り組む労働者のことで、ルールに従って正確に業務をこなし、組織の生産性に寄与することが求められます。高度経済成長期の大量生産体制を支えていたのは、こうした多くのマニュアルワーカーでした。しかし、技術の進歩とともに、機械やロボットによる代替が顕著に進んでいます。
一方のナレッジワーカーとは、ナレッジ(知識)とワーカー(労働者)を組み合わせた言葉で、決められたマニュアルに従うのではなく、自身の創造性や分析力などを活かし、新しいアイディアを生み出したり課題を解決していくワーカーのことを指します。
現在、ナレッジワーカーのような働き方が求められている理由として、前述したテクノロジーの進歩以外にも、気候変動や感染症の流行、価値観やニーズの多様化などにより、VUCAいわゆる将来の予測が難しい時代になっていることが挙げられます。
※VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性の頭文字を取った言葉)
状況が刻々と変化する時代において、マニュアル通りには対処できなくなっているからこそ、課題に柔軟に対応し、工夫や改善を続けていく、いわば機械よりも“人”の方が得意なことが活きてくるのです。
これは特定の仕事に限った話ではなく、ひとつでも自分なりの工夫を加えてみたり、新しいアイディアを生み出していくことで、どのような職種でもナレッジワークと呼べる働き方になっていくと思います。
では、どのようにナレッジワーカーとしてのスキルを高めていけば良いのでしょうか。
どんな仕事もナレッジワークになる可能性があるとはいえ、「今の職場では難しい…」「他の分野でもアイディアを発揮してみたい!」という方もいらっしゃると思います。そんな方におすすめなのが、パラレルワークつまり複数の仕事を掛け持つことです。
ここからは、パラレルワークがどのようにナレッジワークにつながるのか、PARASUKUで取材したパラレルワーカーの声をご紹介します。
企業で営業職として働きながら、個人事業主としてレコーディングスタジオを運営したり作曲活動を行う半田和巳さん。好きなことを本業ではなく副業にすることで、コストパフォーマンスだけを求めることなく、アーティストの個性を活かした音楽づくりにつながっていると言います。
「マニアックな雑誌を読んだり、調べたり、ひたすら独学です。完全なオタクですよね(笑)。でも、これが自分の強みかなと思っています。」
「完全に“好き”で個人事業としてやっていますので、効率を目指すよりもアーティストそれぞれと話をして、個性を引き出す音楽づくりをしようと心がけています。」
新しいアイディアのためには、異なる物事を組み合わせるなど、考え方や発想を変えてみることもポイントです。これはまさに、複数の仕事を掛け持つパラレルワークの強みそのもの。高齢者施設で働きながら出張バーテンダーとして活躍する竹田眞幸さんは、自身ならではの経験を活かしてこんなイベントを企画したそう。
「施設のカウンターでお酒を作って高齢者の方に提供するイベントを、年に2回ほど企画しました。ウイスキーのイベントで知り合った方たちを呼んで、施設のイベントとくっつけたり、今の経験が無いとできなかったことですね。」
また、ナレッジワーカーには、現状を分析し、課題を解決していく力も必要です。そのため、常日頃から前提や思い込みを疑い、客観的な視点を意識することが大切。旅館で人事職を務めながら副業でコーチングを行っている大井洋平さんのお話は、副業経験が外から自身の職場や業界を見つめ直すきっかけになることを物語っています。
「副業でクライアントと話すことで外と内のギャップに気付くことができ、常に新しい視点で自社を見ることができるんです。例えば、部下であってもまずはバックボーンをしっかりと聞くことの大事さを再認識したり、組織内で起こりがちなモチベーションの差に気付いたり、他業種の知見が増えて視野が広がるなど、副業を経験値にして自社にフィードバックできることがたくさんあります。」
これまで多くのパラレルワーカーのみなさんに取材してきた中で感じたのは、どなたも主体的に自身のキャリアを組み立てているということ。枠にとらわれず自分に合った働き方を実践している姿は、マニュアルやこれまでの常識を飛び越えて創造性を発揮するナレッジワークに重なってくると思いませんか?
将来、ますますテクノロジーが進歩していけば、もともとナレッジワークの要素が大きい職種でさえも、人が働く必要はなくなるかもしれません。しかし、人の創造的な営みや、課題を解決していく探究心は続いていくのではないかと思います。それは、今ある職業に収まらないものになるかもしれませんし、今以上に「自分はどういうふうに働きたいのか(働きたくないのか)」といったことが問われることになるかもしれません。
PARASUKUでは、ワーカーのみなさんから働き方に関するご相談を承っています。PARASUKUに掲載中の求人について話を聞いてみたい、パラレルワークに興味があるなど、ぜひお気軽にお話にいらしてくださいね。