ストーリーズ #013
シニアマンションスタッフ×出張バーテンダー・デザイナー
竹田眞幸さん
地域:山形県高畠町タイプ:土日メインの副業
「好き」を仕事にするって、どうすればいいんだろう。
今回のインタビューは、働く選択や価値観が多様化しているなかで、「好き」や「得意」を仕事にしたい人にとってヒントになるお話かもしれません。
山形県高畠町を拠点に、出張バーテンダーとして飲食店とのコラボや野外イベントなどで大好きなウイスキーの魅力を伝えているBARMAR竹田さん。
今ではウイスキー愛に溢れている竹田さんですが、最初からウイスキーを好きだったわけではなく、意外にもカルーアミルクなどの甘いお酒が好みだったそうです。
「ウイスキーは味が苦手で、度数も強くて飲めなかったんです。ですが、21歳の時に宮城にあるニッカウイスキー宮城峡蒸留所に行ったら、ちょうど自分の歳と同じ21年表記のウイスキーがありまして。そのウイスキーを飲んだら、香りが2時間くらい口の中に広がって感動したんですよ。」
飲んだ後の抜けていく香りや体の中に広がる香りに衝撃を受け、今までの飲み物とは違った楽しみ方を知ったと言います。
それからウイスキーを好んで飲むようになった竹田さんですが、あることをきっかけに価値観がさらに大きく変化します。
「山形にあるウイスキー専門のバーに行ったとき、マスターから2つウイスキーを出していただいたんです。そのウイスキーが、スモーキーで臭いウイスキーだったんです。ウイスキーは木の香りがする、どこかしら甘いという印象だったんですが、180度違うものを飲んで世界観が広がりました。自分が知っているウイスキーの世界はまだまだ狭くて、もっと学ばないといけないと思ったんです。」
何気ないきっかけの巡り合わせが、明日を変える原動力になった。そのきっかけに気づけるのも、好きだからこそでしょう。
そして「もっと知りたい」と好奇心を刺激された竹田さんは、迷うこと無く行動に移します。
「最初は休みの時に、ウイスキーのイベントや全国の蒸留所を回っていました。名古屋でウイスキーの大きなイベントがあるんですけど、ボランティアスタッフなのに往復8万円かけて名古屋まで行って参加していたんですよ。参加するスタッフは地元の方ばかりなので、『きみ、山形から来てるの!?』と驚かれましたね笑。」
ウイスキーにのめり込んでいくのが楽しくて仕方なかったと話す竹田さん。
また、楽しかったのはウイスキーとの出会いだけでは無かったようです。
「もちろん自分の知らないウイスキーとも出会うんですが、そこでの人との出会いが凄く楽しかったんです。いろんな方との出会いが増えて、いろんな場所に呼ばれる機会も増えました。今活動できているのは、その出会いのおかげですね。」
竹田さんはそうして知り合った縁を活かし、自身でも山形県内でイベントを開催するようになりました。飲食店とのコラボレーションや外部出店を行なったり、「駆け出しバーテンダー」としてYouTubeチャンネルも開設。ウイスキーの魅力を伝えるために走り出しています。
「県内で開催している出張イベントでは、ウイスキーをあまり飲んだことがない方が多い印象です。ですので、ハイボールやカクテルも用意して、まずはウイスキーに触れもらうことを大事にしています。『ウイスキーって美味しいね』『もっと違うのも知りたい』と、自分がウイスキーを飲んで体験したようなことを、お客さんにも味わってもらえたときは、凄く嬉しいんですよ。」
ありのままのウイスキーを楽しんでもらえるよう、味の雰囲気は伝えるにしても、お客様それぞれの感じ方を尊重することを意識しているそうです。
主に土日や夜の時間にバーテンダーとして活動している竹田さん。では普段は?というと、高齢者専用住宅のスタッフとして、大学卒業後から働いています。
「高齢者施設というと介護をするイメージがあるかもしれませんが、自分が働いているところは『長く元気な状態でいよう』というコンセプトなので、自立している方が多いです。ホテルのコンシェルジュのような、悩んでいる事に対して提案やサポートをする仕事をしています。」
出張バーテンダーの仕事は本業とも関わりがあるのか聞いてみると…
「施設のカウンターでお酒を作って高齢者の方に提供するイベントを、年に2回ぐらい企画しました。ウイスキーのイベントで知り合った方たちを呼んで、施設のイベントとくっつけたり。今の経験が無いとできなかったことですね。」
自分のやりたいことを継続してきたことで、できることが広がっていったと言います。
好きなことだからこそ夢中になれる。少しずつでも始めてみることで、思いも寄らないところで機会が巡ってくるのだと思いました。
最後に、竹田さんの今後の展望を伺いました。
「最終的なゴールとして、自分のお店を持ちたいという夢はあります。それまでにどれだけインプットできるかだと思っています。2019年の11月にアイルランドに一人で行ってきたのですが、アイルランドはアイリッシュパブといわれるパブの文化があって、自分がお店を持つ時の内装や家具の勉強になりました。コロナがなかったら、スコットランド、ロンドンのパブカルチャーや蒸留所も2、3年かけて回る予定でした。そういった現地での経験や蒸留所での体験を、自分が出した一杯と一緒にプレゼントしていきたいですね。」
好きなことへの真っ直ぐな想いを語ってくださった竹田さん。
自分らしさとは、もしかしたら好きを貫くことなのかもしれません。
竹田さんのお話を聴いて、そんなことを感じました。
(取材:神田翔吾 撮影:佐藤俊介)
しごとパラメーター
- シニアマンション「リブウェル」
- BARMAR・デザイナー