ストーリーズ #025
手当て講座講師×自然食品店スタッフ
佐藤あづささん
地域:山形県村山市他タイプ:個人事業主兼パートタイマー
マクロビオティックと聞くとどんなイメージが浮かびますか? セレブが取り入れている食事? 厳しい食事制限がある健康法を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、マクロビオティック望診(※)診断士である佐藤あづささんの「お手当講座」に参加すると、そのイメージは一変します。
※望診(ぼうしん):表情、顔や皮膚の色つや、動作、舌などを見て判断し、食事の処方箋をわたしたり食事指導をする診察法のこと。
活動名は「やさいのごはんのお手当や」。講座や診断を通じて、ちょっとした体と心の不調を、身近な食材や食べ合わせなどで整える方法を伝え広げています。月3-4回のペースで開催している講座のテーマは、「咳・喘息のお手当て」「子宮を整える」「からだ整うお味噌汁を作ろう」といった、生活に密着した身近なものばかり。講座参加者は女性が多く、独身者、赤ちゃん連れの若いママ、更年期世代のお母さんたちまで幅広い層の方が参加しています。
(マクロビオティックを基本とした伝統的な和食をベースに「台所のものを使って身体を整える」手当て法を伝えている)
望診診断士として活動を続ける傍ら、自然食品店でダブルワークを始めたのは、約7年半前(2022年取材時点)でした。個人活動も続けるために、正社員ではなくパートという働き方を選択しました。
「お店では接客から商品管理まで様々なことを担当しています。きっかけは生活費の足しにという理由でしたが、たくさんの人に出会えたり、無添加食品の知識が増えて主業の方にも活かせるといったメリットが多くあります。講座ではその場に参加する方としか出会えませんから、日々たくさんの出会いがあるのは嬉しいですね。」
「それから、なによりも安定収入があることがありがたいです。講座開催だけで仕事をしていた頃は、利益を出すことがなかなか難しく、心に余裕がなくなって焦ってしまうこともありました。副業を始めてからは、気持ちの余裕ができたことで、いろいろなことが試せるようになりました。」
20代の頃は、都内の大手コンピューターメーカーで開発職として勤務していた佐藤さん。結婚後、専業主婦として家族のサポートに専念する中で、自身の体質とお子さんの重いアトピー症状に悩み、その状況から抜け出したいという試行錯誤の中で出会ったのが「望診」という分野でした。そしてそのプロセスで実感したのは「ほんの少しの食を整えることで体や心が変わり、世界の見え方までもかわる」ということ。家族のために「もっとしっかり勉強したい」と、望診診断士の資格も取得し知識を深めていきました。
そのうち、友人の困りごとに応えるというきっかけで、講師としてその知識と体験を「教える」立場に。とは言っても、当初は「私が教えるなんて、まさか!」という気持ちだったそう。「主婦の趣味の延長でお金をもらうなんて」という思いから、参加費は材料費と会場費の数百円だけ。しかしある日、その考えを覆す出来事が起こりました。
「材料代と場所代で500円。それでも足りなくて参加費を1000円にあげなくちゃというときに、参加者の方に『高い』と言われたことがあったんです。そのときに友人がその場で『この話を聞くためにどれだけコストと時間を投資しているか』という話をしてくれたんです。」
「ハッとしました。私自身が、主婦の趣味で稼ぐのは申し訳ないという気持ちが常にあったんですね。でもこの時を機に、女性が仕事をすることや対価というものについて考えるようになりました。収入の多少では仕事の価値はきまらない、主婦がやるからといって片手間ではないんだということに気付いてから、ようやく今のこの活動が『自分の仕事』と思えるようになった気がします。最近は、元気に活動する若い女性が増えてきましたよね。彼女たちの姿からも励まされる日々です。」
さらに東日本大震災の際には、福島から子連れで避難し、不安に押し潰されそうになっている母親たちに対し、心と体を整えるお手当講座を実施。望診診断士という自分の役割を改めて見つめなおす大きな転機になりました。
今年からは講座の開催にとどまらず、マルシェやイベント出店といった新しい分野にも挑戦している佐藤さん。体を温める梅しょう番茶、たんぽぽコーヒー、よもぎ茶といったお手当の飲み物をワンコインで望診し処方するというユニークな活動です。
「普段の望診は事前に情報をいただき十分に精査してからその方にお会いしますが、ワンコイン望診では、その場での出会いと書いてもらった情報をパッと診て合うドリンクをお出しします。まるで武者修行をしているようで、スキルアップにもなっています。」
佐藤さんが今、なによりも大切にしているのは、かつてアトピーの子を抱えて困っていた頃の自分と同じように路頭に迷っている人や困っている人、本当に必要としている人にこの活動を届けることです。
家族の成長ステージとともに、働き方を柔軟に変化させてきた佐藤さん。母として家事をこなしながら二足のわらじで仕事に打ち込む日々はストレスに満ちていると思いますが、その点はどんなふうにケアしているのでしょうか?
「楽しいことが多いので、ストレスとは感じていませんが、ついついやりすぎ体質なので、どうしてもオーバーワークになりがちです。気持ちが上がりすぎないようにして、寝る時間は確保するように心がけています。更年期世代で疲れがたまりやすいので(笑)、日々の手当てでその日のうちにリセットするようにしています。」
「今は以前よりもどんどん『お手当てや』を頑張りたいという気持ちが大きくなっています。でも、やっぱり家族の健康が一番ですね。働く上では自分と家族をないがしろにしないことをなにより大切にしています。家族は家族であろうとしなければ、家族になれないですからね。」
最後にパラレルな働き方をしたい人たちへメッセージをいただきました。
「やってみたいことがある人にはパラレルワークはおすすめです。自分がわくわくすることを、最初から大きくやりすぎずに、身の回りからコツコツやっていくのが良いのではないでしょうか? 今の仕事を辞めてからではなく、まず副業として試してみて、軌道に乗ってきたら本腰を入れるというのも、むりなくはじめるコツだと思います。」
(文:高村陽子)
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