白鷹町は、最上川が流れる山形県中部、春夏秋冬の変化がはっきりと表れ、山菜や鮎といった自然による恵みが豊かな町です。そんな町の古民家を『きものリトリートホテル』として再生させるプロジェクトが始まりました。

「ただの古民家と思っていても、少しその背景を深掘りしてみると、歴史的に面白い価値を持っているものと、気づく時があるんです。」

そう語るのは、同県長井市出身の梅津建太さん。約12年間、東京の金融機関で働いた後、NECキャピタルソリューションに転職し、今は地元に戻って、新規プロジェクトの立ち上げや雇用の創出など、幅広い事業を手がけています。

その一つとして、若者がワクワクする仕事をつくりたいと、県内の有志者たちと株式会社ukitam（うきたむ）を設立し、地域の魅力を内外に発信するホテル事業に取り組んでいます。

「単体では弱いと思う物件も、引いて見ると強みを持っていたりします。今回、改修をすすめている旧奥山邸も、調べてみると、上杉鷹山公の養蚕（ようさん）事業の拡大に尽力した白鷹町の名家という歴史を持っています。
そこから、まず上杉家という文脈で米沢市との繋がりが生まれます。そして、蚕紬（かいこつむぎ）となれば舟運の港があった長井市、それに、最上川沿いの町や北前船とも繋がっていきます。点であったものが線となり、奥山邸のある白鷹町だけではなく、他の市町村も巻き込むような大きな魅力となっていくんです。」

「それでも、”こんなところに、わざわざ人が泊まりに来るのかね”と、懐疑心を持つ地元の方は多くいます。ですが、何も名所や、温泉や歓楽街、お土産屋ばかりが観光の魅力ではないですし、旅の目的ではないんです。むしろ、ありのままが、人を惹きつける魅力になることがあると思います。」

ここ近年は、国内旅行の人気が高まっており、日本らしい原風景や郷土料理、土着的な歴史や文化が求められるようになりました。特に、都会出身者にとっては、自然を体感し、旬の食べ物を食べて、身体を休め、気持ちを整える第二の故郷となる場所を求める傾向が、近年強くなっているようです。

そんな中で、『きものリトリートホテル』は、白鷹町をよく知ってもらうための場所としてだけでなく、さらなる展開を考えているということです。

「隠れ家のような高級ホテルにしたいわけではありません。まちづくりの拠点になれるような、開かれたホテルを作ろうと考えています。
白鷹町を始め、近隣にも魅力的なものがたくさんあります。このホテルを軸に、町を散策したり、飲み屋巡りをしたり、地域で活動をする若者との交流、トレッキングやラフティングなどの自然体験と、点で存在する山形の魅力を、線としてつなぐ場所になることを目指しています。」

「このような動きを興すことで、その先々で、生業が生まれていくと思うんです。人が動けば、新しい事業を立ち上げる方も現れるでしょうし、既存の仕事を充実させたり、変化させようとする方も現れると思います。
そうなると、仕事が増え、地元に残りたい若者の就職先になると考えています。また、私のように故郷に戻って来たい出身者にとっても、仕事がある、もしくは、仕事を生み出す可能性があるということは、とても帰省しやすい環境になります。」

ホテル経営を地域活性化の軸にし、地域全体の雇用促進に繋げていくといった広いビジョンを持っていることが、株式会社ukitamの面白い点です。生業が生まれ、人が増え、その人が更に人を呼び、賑やかな町ができていく姿を想像すると、とてもワクワクしますね。

さて、そんな株式会社ukitamでは、『地域の文化・生業』体験プログラムの企画・運営者を募集しています。

「白鷹町には、蚕や着物の染色文化があります。また、名産品である深山和紙など、ここで体験できることはたくさんあります。そういった文化や生業を、宿泊者や地域の人たちが体験できるよう企画を立案してくれる人を募集しています。将来的には自らが運営してくれる、なんて人が出てきたら嬉しいですね。
伝統工芸士の方や地域の人たちとコミュニケーションを取って、私を始め、地元の人たちも気づかなかった面白いものを発掘できる人が望ましいですね。白鷹を、山形を、深掘りしたいという人はぜひ。」

「その他に、ホテルのスタッフも募集しています。こちらは、複業として考えていただくことも可能です。
例えば、子育てをしている方でも、一日に数時間空きがあれば、そこだけ働くとか、別の会社で働いていて、土日に複業をしてみたいという方など、生活の中の隙間時間を上手く活用していただきたいですね。」

どちらの仕事も、地域に興味を持って地域を学び、誰かのために力を注ぎ、自分の生活を豊かにするといった、働くことの意味を考えられる人を求めているということでした。

また、働くことに不安を持っている若者にとっても、これからの本職にするかどうかのお試しになるかと思います。それに、接客などを通して、コミュニケーション能力のスキルアップにも繋がりそうですね。

「山形を良くしたい。山形の良さを伝えたい。私が帰ってきたのは、やはり山形が良い場所であり、好きだからです。
同じように、この山形を盛り上げていきたいという志を持って、自ら考えて、積極的に行動できる方が応募してくれれば、とても心強いです。」

梅津さんが、この事業を始めるに至ったのは、人の縁によるものだということです。山形へ戻ってくるきっかけも、古民家を紹介していただいたことも、「どうやったら山形（故郷）が面白くなるか」と考えて、行動を起こしてきたからということです。

この地には、行動を起こせば応えてくれる人がたくさんいます。ぜひ、色々な可能性と出会いを求めている方は、株式会社ukitamのしごとに応募してみて下さい。

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（文:池田将友）