主業 滑川温泉福島屋のしごと
宿泊業

仕事の紹介
山形県米沢市、福島県にほど近い山深い場所に『滑川温泉 福島屋』があります。
大自然の中で天然温泉を堪能できる老舗旅館で、何十年先を見据えた新しいプロジェクトが動き出そうとしています。
社会貢献や環境問題を考え、日本人らしい精神性を体験できる場所へと進化させていく取り組みの要となる、滑川温泉福島屋専務の笹木雅生さんと株式会社ナウエル取締役社長室室長の宮嶌浩聡さんにお話を伺いました。
(左から笹木さん、笹木さんのお母様、お父様、株式会社ナウエルの酒井社長、宮嶌さん)
Q:お二人が出会ったきっかけは?(以下、敬称略)
宮嶌「DMOなどの観光関係の仕事をやっている中で、経営支援を募集している旅館があるとお聞きしたんです。それが、滑川温泉であったのですが、私が存じ上げる限りでは、素晴らしい自然環境に囲まれた秘湯で、魅力は十分にあり支援する必要はないと思っていたんです。
ただ、お話を伺ってみると、これからの10年、20年先を考えた時の持続可能性について経営課題を持ってらっしゃったんですね。」
笹木「今は両親が健在で一緒に仕事をしているのですが、私が正式に旅館を引き継いだ時には、今のままではいかないだろうと思ったんです。また、お客様の層も、当館に求めるものも、これからは変わってくるだろうと思ったんです。」
宮嶌「そういった将来のことを見据えて動こうとしている笹木さんに共感し、私共で手伝えることはないかと 事業に取り組み始めたんです。」
Q:滑川温泉について教えてください。
笹木「温泉の発見は、およそ500年前と言われており、開湯は1762年になります。当時の上杉家当主の方から開湯許可を受けた由緒ある温泉でもあります。建物も200年ぐらい古いものです。」
宮嶌「新しいものは作れても、古いものは作れませんから貴重な建物ですね。もしかして、その界隈では建物が一番古い温泉宿なんじゃないですか?」
笹木「詳しく調べたことはないですけど、私が知る限りはそうかもしれません。」
Q:秘境と言われる由縁はどこにありますか?
笹木「地図で調べてもらえると分かると思いますが、米沢と言っても街から随分と離れた山奥にあります。」
宮嶌「インフラ関係も、街から引いていないんですよね。」
笹木「電気は近くの川を利用した水力発電で担っていて、水は貯水タンクに貯めたものを濾過して使っています。」
宮嶌「このご時世で、電線も水道も通っていない宿というのは、とても珍しいですよ。電話線も通っていないんですよね。」
笹木「携帯電話も一部のキャリアを除いて圏外になります。なので、宿泊されるお客様には不便をかけてしまっているなと。」
宮嶌「いえいえ、その『不便』と思っていることが『価値』になりうるんですよ。」
Q:不便が価値になるとは?
宮嶌「例えば、川を使った水力発電は、地球に負担をかけないクリーンエネルギーなわけです。それって、現代で言う、再生可能エネルギーやSDGsの考えを既に実践していることで、循環型社会を体現した旅館ということなんですよ。」
笹木「そう言っていただけるとありがたいのですが、電力が不安定になったりとお客様に迷惑をかけてしまっているなと思うことがあるんです。」
宮嶌「ここが肝だと思うんですが、今まで旅館やホテルは"こうあるべき"という既成概念があるわけです。快適で、便利で、娯楽があり、アメニティがしっかりしているといったような、お客様をおもてなしする場所であるべきという概念ですね。」
笹木「そうですね。やはり、当館もそうあるべきということで、これまで経営をしてきました。」
宮嶌「でも、これからは、そこが変わってくると思うんです。震災があり、新型コロナがあって、現代の人たちは環境や社会問題に対して大きな関心を持つようになりました。
そんな中で、滑川温泉は、環境に負担をかけない循環型の仕組みを何百年も続けていて、実体験(宿泊)を通して学べるのですから、とても貴重な場所ですよ。だからこそ、価値を再確認して伝播するようなプロジェクトを立ち上げようとしています。」
Q:新たなプロジェクトでは、どんなことを行っていくのでしょうか?
宮嶌「魅力となる価値はありますけど、やはり旅館単体では集客力に欠けるのではないかと思っています。」
笹木「冬になると旅館までの道が閉ざされるというような不便な場所ですから、今後の集客に課題はあるなと思っていました。」
宮嶌「いえいえ、それがすごいじゃないですか。冬に行けなくなるというのは自然の摂理に合っています。それぐらい、手付かずの自然が残っているという魅力になるわけです。笹木さん、旅館の裏手には有名な滝があるんですよね?」
笹木「日本滝百選に選ばれた『滑川大滝』があります。」
宮嶌「そういう名所もあるわけで、広域的に見ると大自然を堪能できる拠点になるんですよ。 自然環境は、デトックスやグリーン・ディスティネーションズの考えに結びつきますし、そんな山から取れる食材を使った料理はマクロビそのものですから。」
※マクロビ:マクロビオティック(Macrobiotic)。玄米などの穀物を主食とし、野菜・豆類・海藻をベースとする日本生まれの食事法。
笹木「これまでのお客様は温泉目的の方が多かったので、マクロビといった考え方は思い付きませんでした。」
宮嶌「それと、最寄りの峠駅(JR奥羽本線)は、近代化産業遺産に選ばれるスイッチバック遺構があり、鉄道が好きな方を始め、歴史や文化が好きな方に好まれる場所でもあるんです。
今挙げたような、『点』で存在するものを繋げて『面』にすることで様々なアプローチが考えられ、幅広い方を集客できると思っています。これまでの旅館業の延長では掴まえることができなかった人たちに、滑川温泉を訪れるキッカケを生むことができる。それを実践していくプロジェクトですね。」
笹木「今回、宮嶌さんに相談するまでは、この土地にそこまでの価値があるなんて気づかなかったですね。」
宮嶌「笹木さんにとっては当たり前過ぎますし、地元の方も不便が念頭にあると価値に気づきにくいのかもしれません。でも、端から見れば、SDGsの先を言っている最先端の場所なんですよ。」
Q:プロジェクトを通して伝えたいこととは?
宮嶌「東北は、倭人と蝦夷の境にある土地で、中でも山形は日本人らしい精神性が残る場所だと思っています。だから、日本の方にとっては自分を取り戻す場所になり、外国人の方にとっては日本を体験できる場所になると思っています。」
笹木「山形は、本当に土地々々で独自の文化が残っていますからね。」
宮嶌「私は、滑川温泉の環境はマインドフルネスに向いているなと思ったんです。そして、日本の文化を『形の文化』『様式の文化』『整える文化』と捉えていまして、そのすべてを体験できる場所になると考えています。デジタル社会に疲れた方が一時的に休みに訪れる場所であったり、企業や学校の研修や環境問題を考える場所として、滑川温泉に宿泊することが "人間らしい生き方を取り戻してくれる"と考えています。」
笹木「今おしゃったような方々は、これまでの経営の中では出会うことがなかったお客様になると思いますし、宮嶌さんが言うようなことを体験できる場所になれるのなら光栄に思います。」
宮嶌「滑川温泉の価値がこれまで以上に良いものになっていきますよ。」
Q:求人はどんな方を募集していますか?
宮嶌「滑川温泉に住み込みで働いて頂きながら、プロジェクトに関わってくれる人を募集しています。基本は、旅館のスタッフとして宿を運営し、エリアイノベーションを行うプロジェクトにも関わってくれる方を求めています。」
笹木「旅館は冬季間閉館してしまいますので、旅館業は春から秋にかけての仕事になるかと思います。」
宮嶌「社会貢献ができ、経済的に面白い取り組みを共に実践できると思います。
社会性を求める人、事業性を感じてキャリアアップを求める人、後はプロスキーヤーやプロスノーボーダーのような冬に仕事がある人達など、興味や環境が合う方はご応募ください。私達と共に、新しい旅館の形を作っていきましょう。」
笹木「どうぞ、よろしくお願いします。」
不便が価値になるという逆転の発想が、老舗旅館に最先端の動きを生もうとしています。
自然が好きな方や環境問題に取り組みたい方、二人の考え方に共感された方など、ぜひご応募ください。
(文:池田将友)
しごとコンパス
しごとパラメーター



雇用形態 | 正社員・アルバイト |
---|---|
勤務時間 | 6:30~20:30の間で8時間(4月下旬~11月上旬で希望に応じて) |
勤務地住所 | 山形県米沢市大字大沢字滑川15番地 |
希望スキル | コミュニケーション力、エリアイノベーションに関わるスキルがあると尚歓迎 |
報酬 | 時給1,000円~ |
社会保険 | あり |
手当 | 通勤手当、繁忙期手当 |
応募条件 | 特になし |
その他 |