コラム #025
雇用契約と業務委託契約の違いとは?企業・ワーカー双方の立場からメリット・デメリットを解説!
近年、1つの仕事や職場に囚われない、パラレルワークや副業といった働き方が広まってきています。しかし、こうした働き方に取り組みたいと思っても、金銭面や契約面などに不安を感じる方もいらっしゃると思います。実は、業務委託契約であれば、副業やパラレルワークに取り組むハードルがグッと下がることもあるのです。この記事では、業務委託契約と雇用契約の違いを解説した上で、企業・ワーカー双方の立場から業務委託契約のメリット・デメリットを解説します。
業務委託契約とは?
業務委託契約とは、社内の業務の一部を外部の企業や個人に委託する際の契約です。法律上で定義されている請負契約と委任契約、準委任契約を総称し、業務委託契約と呼ばれています。この3つの契約について、以下で具体的に解説します。
1.請負契約
請負契約とは、成果物の完成を目的とした契約です。受託者は契約内容に沿って成果物を完成させ、委託者は成果物と引き換えに報酬を支払います。成果物に不備・欠陥などが見つかった場合、受託者は修正を求められたり、報酬の減額に応じたりする必要があります。請負契約の委託先として、デザイナーやライター、エンジニア、営業職など、様々な職種が考えられます。
2.委任契約
委任契約とは、法律行為に関する業務に対して報酬が支払われる契約です。請負契約とは違い、成果物ではなく、業務自体に報酬が支払われます。例えば、弁護士にトラブルの解決や裁判所の手続きを依頼したり、税理士と顧問契約を結んだりする場合、委任契約に該当します。
3.準委任契約
準委任契約とは、法律行為以外の業務に対して報酬が支払われる契約です。委任契約と同様、業務自体に報酬が支払われます。準委任契約の委託先に該当する職種として、法律行為以外のコンサルタントや受付事務、理美容師などが挙げられます。
雇用契約と業務委託契約の違いとは?
一方の雇用契約とは、労働者が雇用主の元で労働に従事し、その労働力の対価として、雇用主が賃金を支払うことを約束する契約です。例えば、正社員や契約社員、パートやアルバイトなどが挙げられます。
雇用契約と業務委託契約の主な違いを整理したのが下の表です。
項目 | 雇用契約 | 業務委託契約 |
---|---|---|
雇用主 | 勤務先の企業等 | なし |
指揮命令権 | あり | なし |
勤務時間の制約 | あり | なし |
勤務場所の指定 | あり | なし |
賃金の種類 | 給与 | 報酬 |
ワーカーが提供するもの | 労働力 | 成果物または業務の遂行 |
労働法の適用 | あり | なし |
社会保険の加入 | あり | なし |
雇用契約と業務委託契約の大きな違いは、指揮命令権と労働法適用の有無です。
雇用契約の場合、労働者は雇用主からの指揮命令に基づき、業務に取り組みます。また、労働法が適用されるため、雇用先で社会保険に加入できるなど、労働者として保護されます。
一方で、業務委託契約の場合、受託者は業務の遂行に関し、委託者の指揮命令を受けません。そのため、受託者自身が業務を進めやすい場所や時間で働くことができます。また、受託者はあくまで企業側から業務を委託された個人または事業者であるため、労働法は適用されません。労働者として保護されないため、受託者自身で社会保険へ加入するなどの対応が必要です。
業務委託契約のメリット・デメリット
業務委託契約で働く場合、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。この項では、企業・ワーカー双方の立場から、業務委託契約のメリットとデメリットをご紹介します。
企業側のメリット
1.採用コストを抑えられる
業務委託契約であれば、雇用契約の場合に必要な備品代や設備代、社会保険料などを抑えることができます。また、専門性の高い人材を、必要なときに即戦力として活用できるため、雇用契約よりもコストを抑えて、専門人材を受け入れやすくなります。
2.業務の生産性が向上する
専門性の高い業務を委託することで、社内の人材は本来やるべき業務に集中することができます。また、社内の人材をより適した業務へ再配置することで、業務の生産性向上が期待できます。
3.副業人材を受け入れやすい
副業人材を受け入れる際、問題となりがちなのが労務管理です。たとえば、複数社で働いているワーカーに残業や労災が発生した場合、どちらの会社が負担するべきかといった問題が生じます。そんなとき、業務委託契約であれば、そもそも労働法が適用されません。もちろん、オーバーワークにならないための配慮は欠かせませんが、法的な労務管理の心配がないのは大きなメリットです。副業人材を柔軟に活用することで、新たなスキルや知見を取り入れることができ、企業体制が凝り固まるのを防ぐことに繋がります。
企業側のデメリット
1.社内のノウハウの構築や社員のスキルアップにつながらない
業務委託に頼り過ぎてしまうと、社内のノウハウの構築や社員のスキルアップにつながりません。社内の人材が育ちにくくなるため、社員教育ごと委託する、委託する業務を慎重に選別するなどの検討が必要になります。
2.製品やサービスの質が下がる可能性がある
業務委託契約の場合、企業は受託者の業務遂行に対する指揮命令権がありません。その分、業務に関するコミュニケーションが適切に行われないと、成果物の質が下がってしまうこともあります。進捗や目標などの情報を、こまめに共有することが欠かせません。
3.場合によってはコストがかかる可能性がある
様々なコストを抑えて人材を活用できる業務委託契約ですが、委託する業務内容や業務量によっては報酬が高くなることもあります。また、報酬の適正価格の判断を誤り、相場より高く報酬を支払ってしまうこともあります。そのため、報酬の相場を事前に調査し、適正な価格で委託しなければなりません。
ワーカー側のメリット
1.得意分野を活かした業務に専門的に取り組める
ワーカーのみなさんの中には、得意分野を活かし、様々な業務を経験したい方もいらっしゃると思います。業務委託の案件は、専門性の高い業務が多い傾向にあります。その中から、自分の強みや経験、得意分野を活かした業務に限定し、引き受ける案件を自由に選ぶことができます。様々な案件に取り組み、経験を積むことで、自身の社会的な評価を高めることができます。
2.実力や努力次第で収入アップにつながる
得意分野の実力や努力次第で、収入アップも期待できます。業務委託の案件の報酬は、難易度や成果物の内容によって設定されています。そのため、質の高い成果物を納品したり、多くの案件に取り組んだりすることで、高い収入を得ることができます。普段会社員として働いている方でも、副業が可能な職場であれば、業務委託の案件を受けることで収入アップを目指せます。
3.働き方の自由度が高い
業務委託契約では、受託者に対して委託者の指揮命令権がありません。そのため、業務に取り組む時間や場所にとらわれず、雇用契約よりも自由で柔軟な働き方を実現できます。また、特定の組織に所属しないため、人によっては人間関係のストレスを軽減することもできるでしょう。
4.成果物で能力が評価される
受託者は、成果物や業務の遂行を目的に働くこととなるため、主に成果物の質によって能力が評価されます。質の高い成果物を納品した場合、その後も継続して仕事を任せてもらえるなど、チャンスが一気に広がることもあります。
ワーカー側のデメリット
ワーカー側の最大のデメリットとして、労働法が適用されないことが挙げられます。これにより、以下2つのデメリットが考えられます。
1.収入が不安定になりやすい
業務委託契約は案件ごとに賃金が設定されていますが、設定する賃金に関して規制はありません。そのため、報酬が最低賃金以下に設定されたり報酬が値下げされたりする可能性があります。また、案件を委託されたとしても、継続的な仕事が約束されるとは限りません。1つの案件のみで契約が終了する可能性があり、月によって収入の増減が激しくなることがあります。収入を安定させるためには、複数の案件を抱えたり、継続性のある仕事を選んだりするなど、工夫が必要です。
2.保険や税金、確定申告などの手続きを自分で行う必要がある
受託者は委託者と雇用関係にないため、受託者自身で社会保険へ加入する必要があります。また、税金や確定申告などの手続きも、自分で行う必要があります。仕事をしながら手続きをしなければならないため、事前に手続きの仕方を確認し、余裕を持って取り組むようにしましょう。
上記2つのデメリット以外にも、仕事探しや企業との契約、報酬の交渉を自分で行う必要があるというハードルが伴います。特に、始めたばかりで経験が浅い時期は、社会的な信用が低いため、仕事探しの段階から苦労することがあります。そのため、様々なコミュニティや交流会に参加したり、フリーランスエージェントを活用したりするなど、人脈や実績を広げるために時間をかける必要があります。
山形の企業とパラレルワーカーに聞いた!業務委託契約のメリット・デメリット
では、実際に業務委託契約をしている企業やワーカーは、どういったメリット・注意点を感じているのでしょうか。これまでPARASUKUで取材した方の声をご紹介します。
企業側の声:株式会社四釜製作所様
株式会社四釜製作所様は、山形県長井市に本社を構える製造業の企業です。PARASUKUにてITに精通した副業人材を募集し、採用に成功しました。
「IT人材と言っても必要となるケースはそんなに多くはないんですね。週に数回お知恵をお借りしたいといった感じです。ですので、副業(業務委託)として関わっていただく方が良いと考え、募集をかけさせていたただきました。」
「うちは全社的に副業をOKにしていますが、法律的なところで残業代をどっちの会社がもつのかという問題は根強くあると思います。フリーの方が副業されるのは良いと思いますね。ただ、サラリーマンとなると、労働基準法の適応範囲内で問題が生じているというのが現状だと思います。」
四釜製作所様では、「フルタイムで雇用するほどではないが、いてくれると助かるポジション」の採用に、業務委託をうまく活用しています。HPやSNSの運用、ネット広告の出稿などを手伝ってもらうことで、優先度が下がりぎみだった業務が回り始めるとともに、既存社員の負担も軽減できているようです。
一方の注意点としては、やはり残業代の問題を挙げています。また、このほかに機密保持についても気を付けなければならず、事前に契約内容を精査しておくことで対処しているとのことでした。
記事全文はこちらから:コラム#019 副業人材活用企業インタビュー「株式会社四釜製作所」様
ワーカー側の声:中井茉由子さん(コーチ・講師・メンター)
山形県長井市に拠点を置き、オンラインでエグゼクティブコーチの活動をしている中井茉由子さん。教員や会社員としてのキャリアを経て、独立。取材当時は個人でクライアントを抱えながら、2社と業務委託契約を結んでいました。
「3つ(コーチ・講師・メンター)とも人材開発や対人支援という意味では変わらないのですが、それぞれ特化していることが違います。もっと自分がやりたいことにフォーカスするために、別の扉を開いていった感じです。本業AがあるからBにも繋がるし、Cのスキルアップにもなるというふうに、それぞれ関係しているんです。」
「相手の時間に合わせていると自分の時間がなくなってしまうので、休むことをとても意識しています。
それと同時に、しっかり時間を使わないといけないなと思うのは、学び続けることです。私が今担当しているお客様は、福祉系から外資系IT企業まで多岐に渡るので、広く様々な知識をアップデートしていかなければいけません。」
「職業・中井茉由子でありたい」と語る中井さん。ご自身のやりたいこと・得意なことを軸として、自分なりのポートフォリオを形作っていました。
勉強している時間が会社員時代の何倍にもなったとのことで、向学心やタフネスさが印象的でしたが、その分きちんと休むことも意識しているようです。
まとめ
最後までご覧いただき、ありがとうございます。この記事が、働き方の選択肢の1つとして、業務委託契約をご検討いただくきっかけとなりましたら幸いです。
PARASUKUでは、業務委託契約に関する求人も掲載しております。業務委託契約に挑戦してみたいと考えている方は、ぜひ求人をチェックしてみてくださいね。
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(文:柴崎桃香)