「幼い頃、将来の夢に『人の役に立ちたい』と書いていました。心が触れ合い、目の前の方が笑顔になるとき、夢が叶っているなと幸せを感じますね。」

そう微笑むのは、小野寺志保さん。コスメの製造・販売「Sana」を運営しながら、星読み(占星術)カウンセラーを副業とするパラレルワーカーです。

鶴岡市の高校を卒業後、上京して会社員として働いていた小野寺さんがUターンしたのは、2013年に家族が体調不良になったことがきっかけでした。大切な家族を守りたいという気持ちと、以前から自身や娘さんが抱えていた敏感肌を改善したいという気持ちから、衣食について勉強するようになったそうです。そして、学びを深める中で、市販されている食べ物や化粧品には、安全性に疑問がある成分が多く使用されていることを知りました。

「心身ともに健やかに過ごすために、食べる物は安全に作られたもの、肌に触れるものは素材や製造過程が安心できるものがほしい。」

そう考えた小野寺さんは、独学で石鹸作りを開始。オーガニックの原料やぶどう樹液などの天然素材を使い、肌が弱い方でも安心して使える商品作りを行っています。また、参加者が手作りを楽しめるよう、ワークショップも積極的に開催してきました。中でも、手を動かすことで脳の働きを活性化し、発想力の強化にもつながる「石鹸粘土」は大人気に。その他、天然鉱石を使ったアイシャドウやミツロウを使った保湿クリーム作りなど、多数のイベントを行ってきました。

コロナ禍の現在は、自宅で手作りできるキットの販売へシフト。販売形態は変わりましたが、効果や作り方を丁寧に説明するなど、お客さまとの信頼関係を大切にしています。

また、小野寺さんは鶴岡産シルクの普及にも尽力しており、シルク作りの元となる養蚕にも携わりました。絹は、触れた部分の新陳代謝を促す、温める、清潔に保つなどさまざまな効果がある魅力的な素材ですが、生産が難しく、国産シルクはとても貴重。小野寺さんは多くの方にシルクの効果を感じてほしいと、スキンケアクリームや布ナプキンに加工しています。

さらに2018年にはクレイインストラクターの資格を取得。厳選したクレイを使って石鹸やファンデーションを作り、美のサポートを行っています。
小野寺さんの商品は口コミで人気となり、肌荒れに悩む方やアトピーの子どもを持つお母さんなどリピーターが多数。
「ハーブやミツロウ、クレイなど、自然の中にあるものを生かして美しくなれる。」
小野寺さんは、商品作りを通してそのようなメッセージを発信しています。

一方で、高校生の頃から心理学に興味があったという小野寺さん。人との接し方に悩んだことをきっかけに、8年前から独学で星読みの勉強を始め、心理カウンセラーの資格を取得しました。小野寺さんが行う占星術は、生まれた日時の星の配置から、その人の思考の傾向や持っている能力、人生で与えられた課題などを読むというもの。それぞれが得意なことを生かして幸せに生きていけるように、小野寺さんは個々の悩みに親身に寄り添い、愛情をこめてアドバイスします。カウンセリングを通じて涙を流す方も多く、「生きることが楽になりました」「思い込みやしがらみから解放されて自分の可能性を感じ、新しいことに挑戦しようと思いました」など、多くの喜びのメッセージが届くそうです。

小野寺さんが大切にしているのは、答えを押し付けるのではなく、自ら考えて生きていけるように自立をサポートすること。

「鑑定結果に良い、悪いはありません。人はそれぞれ個性を持っていて、自分の性質を知って生かすことで誰でも輝くことができます。」

海辺のカフェでのカウンセリングが多く、開放的な空間でじっくりと自分と向き合い、心の重荷を捨ててすっきりして帰られる方が多いそうです。

「現在の仕事スタイルは自分に合っています」という小野寺さん。

「コスメと星読み、共通のお客さまには性格に合わせたコミュニケーションをとることができます。また、星読みを始めてから娘との接し方について迷わなくなりました。娘は家族との時間を大切にするタイプなので、夕方以降は仕事を入れないようにしています。時間の融通がきくっていいですよね。」

小野寺さんの星読みでの鑑定は、「没頭して好きなことを追求するタイプ」。コスメ作りも星読みもゼロから独学で学び、たくさんの方を笑顔にしてきました。それは、湧き上がる好奇心を大切にしたからこそだと思います。「自分を知り、得意なことや好奇心が湧き上がることを続けると、自分だけの生業に出会える」。取材を通して、それぞれの未来には無限の可能性があると強く感じました。

（文:綴彩乃）