ストーリーズ #023
レンタルスタジオ運営×営業企画
高橋諭さん
地域:山形県山形市タイプ:パラレル個人事業主
「誰かの”アクション”に、そっと応える存在であれれば」
そう語るのは、個人事業主として、株式会社三栄本社のマーケティングやブランディングを担当しながら、無人型のレンタルスタジオを運営する高橋諭さん。
マルチに事業を展開する高橋さんの原動力は、自身が抱えていた悩みが起点となっていました。
「昔から、あまり自信があるタイプではなく、いつも周りを気にしてから行動をしていることが多かったので、自分から事を興すことができませんでした。それでも、"思うようにやりたいことがあるよな"、"燻っているものを持っているな"と、ずっと抱いていたのも理解していました。
大学(東北芸術工科大学)を卒業して、個人事業を始めたり、一度、故郷の岩手県に戻ったりしたのですが、縁があり山形に戻り、長く会社勤めをさせていただきました。企業理念を持つ会社の中で、日々のミッションをこなしていくことは、少しずつ自信を持たせてくれた大きな経験だったと思います。」
高橋さんは、会社内でも、誰もやりたがらないような仕事を率先して取り組んできたそうです。
それは、担当する人がいなく会社が困っている事であり、また、会社にとって重要なことであろうという考えがあってのことでした。
そういった仕事ぶりが評価され、株式会社三栄本社では、商品PRや店舗のブランディングだけでなく、プロジェクトのディレクション等を任せられるようになり、結果、高橋さんの心境が変化していきました。
「大きな仕事を任せてもらえるようになり、自分の中でマイナスだったものが、段々とプラスになってきた感覚がありました。そうしたら、ものづくりの意欲が湧いてきて、『やっぱり、自分は作りたい側の人間なんだな』と立ち返ることができたんです。
実は、日頃からいいなと思ったことをメモしているんです。ずっと、小さなアイデアを貯め込んでいたんですが、社会人としての経験やスキルが上がってきたことや、気持ちの湧き上がりもあって、アイデアを形にするのは今だと感じたんです。
そこで始めたのが、レンタルスタジオ『GRASSES』です。無人型のレンタルスペースで、壁一面が鏡張りになっており、主にダンスレッスンなどで使用できる場を作りました。」
丁度、CROSS七日町(山形市七日町)の地下に空室があったことや、チャレンジを応援してくれるオーナーさんのご厚意もあり、アイデアを具体化する良いタイミングであったと高橋さんは言います。
では、なぜダンスであったのか、無人型なのか、GRASSESEという名前に込められた思いは。さらに詳しく伺いました。
「実は、ダンスに関しては無知で、何も知らなければ、もちろん踊れません(笑)。
それでもダンススペースにこだわったのは、口コミで、ちょうどいいサイズのダンス練習場を探しているという声を聞いたのと、私自身、無知だからこそ、得られるものが多いと思ったからです。最初は、ヒップホップダンスのような若者が利用するものばかりと思っていましたが、日本舞踊の練習やヨガ、プロジェクターを投影してゲームと、私も気づかなかった利用のされ方を知ることができています。」
「無人型にしたのは、新型コロナの影響もありますが、これから伸びるであろうシェアリングエコノミーの業態を見据えてです。それに、私も前職を完全に辞めたわけではなく、業務委託という形で仕事を続けさせていただいているので、時間のやりくりの為ということもあります。
また、無人であることで気軽に利用できるのではないかと思ったんです。私のように自信がない方は、いきなり多くの人がいる場に飛び込むことはハードルが高いですし、何を始めるにも最初の一歩がとても重たいんです。その点、無人ならば、人目を気にすることもありませんし、自分のタイミングで利用できると思ったんですね。」
「やりたいことが見つかっても、行動に移せない。そもそも、やりたいことが見つからない。でも、動き出せば、やりたいことが見つかるはず。私がそうであったように、誰かに背中を押してもらいたいという人は潜在的に多くいるんじゃないかと思います。その背中をさりげなく押せる選択肢の一つとして、GRASSESがあればいいと思っています。
仕事や趣味、毎日の暮らしや人間関係で燻っている人たちが、ポンっと飛び込んだら一つ先に進める場所。同じように思う人たちが、どんどん増殖していくような場所。自然な形で、さりげなく、前に進みたかった人たちが集って来れる場所。豊かなライフスタイルにつながる、そんな意味を込めて、GRASSESと名付けています。」
自分の経験から、同じように「やりたいけど、できない」という人のために、という思いで始めた事業は、2021年7月の第1号店を皮切りに、山形市にもう1店舗、仙台市に1店舗と広がっています。
最後に、複数の仕事をうまく掛け持ちするポイントや今後の展望についてお聞きしました。
「あまり、パラレルワークをしているという感覚はなくて、個人事業の大きな枠組みの中で、様々なプロジェクトが進行しているといった具合でしょうか。自分ができると思う事をやっているので、無理をしているわけでもないですし、自分で時間の管理ができたりと、とても良いバランスを保てていると感じています。
それに、多様な仕事をしているおかげか、色々なアイデアが生まれてきています。今は、プロダクトという点から、燻っている人たちの背中を押せないかとも考えていて、試験的に『Grass Notebook』を開発して販売しているところです。アイデアのメモやTodoリストなど、頭の中で思い描いているものを、一旦、言語化してみるというものです。場所だけでなく、アイテムから誰かの”やりたい”をサポートできないかというものですね。」
「自信がなかった自分でも、このようにできているわけですから、きっと多くの人も同じように、やりたいと思ったことがやれるのだろうと思っています。まずは、私が実際にやってみて、やりたいと思ったことをやれるぞということを立証していきたいと思っています。」
(文:池田将友)
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