ストーリーズ #005
SE×カフェ・塾の経営
大垣敬寛さん
地域:山形県米沢市他タイプ:週3正社員
リモートワークやワーケーションで場所にとらわれず働く、ミーティングはオンラインで、任せられる業務はAIやロボットに…
仕事の中身や働き方が急速に変化していきそうな昨今。ひいては、社会で求められる力も変わってきていると感じます。
山形県米沢市。このあたりの地域には珍しい、ニュータイプの塾ができました。学習塾ESTEM(エステム)です。
「いわゆる『成績を上げよう』とか『受験のために』ということではなく、もちろんそこも面倒見ますが、考え方を養ったり、好きなものを研究して発表したり。いろいろなことを体験してもらいたいなと思って、この塾をスタートさせました。」
講師兼代表を務める、大垣敬寛さんです。
学習塾ESTEMは、時代を生きる力を育む学習塾。
「ICT・AI・ロボット技術の発展によって、ますます『前ならえ』ではなく、その人独自の創造性・専門性が求められるようになっています。
ESTEMでは、(中略)授業時間内に多様な体験を提供するとともに、お子様の興味を伸ばしていくアクティビティを行っております。」(ESTEM公式Webページより)
ESTEMのサイトをのぞくと、これまでの授業内容が紹介されています。授業の分野は、プログラミング、ゲーム制作から、落ち葉図鑑の制作に食虫植物まで!生徒さんひとりひとりの興味を大切に拾い上げる授業が特徴です。
AIやロボットの発展が進む時代に必要な力を育むESTEMですが、実は大垣さん、それらの開発に携わる当のエンジニアでもあります。
「ケーブルテレビを運営する株式会社ニューメディアでは、ユーザーの閲覧履歴をAIに分析させ、その人に合わせたおすすめ番組を表示させる仕組みを開発しています。また、ロボットで業務を自動化させていくRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)プロジェクトにも携わっています。」
※株式会社ニューメディア(NCV):米沢市に本社を置き、ケーブルテレビやコミュニティFM、インターネット接続サービス等を展開している企業。
NCVでは正社員として、基本的に月・水・金の週3勤務。それ以外の日を、塾などの他の仕事に充てています。
「全部自分が講師をするわけではないですが、塾の授業は週3日くらい入っています。あとは、カフェの方に月1、2回くらい行っていますね。」
カフェというのは、南陽市の熊野大社境内、大いちょうの木の下にあるicho caféのこと。学習塾ESTEMを運営する株式会社山のむこうでは、先にこのicho caféを経営していました。
営業をやめていた旧いちょう売店を改装し、まちづくりのために集まった有志たちの手で居心地の良いカフェへと再生。横浜市出身の大垣さんも、山形の知人の声掛けで関わることになったそう。それにしても、縁もゆかりもなかった土地に来るというのは踏み切りましたね。
「大学を卒業するときに声をかけていただいたのですが、そのときはアプリ開発のようなことで起業の準備をしていたので、どこでも仕事できるだろうと。とはいえ、本当は1、2週間で帰る予定だったんですよ。でも、何だろう。こっちに来てみたら、本当に住みやすくて。」
icho caféも地元の人が集まったり、熊野大社の参拝にいらっしゃった方がほっと一息ついたり、居心地の良い空間になっています。
「そういう意味では、カフェ経営を通して得た技能というより、この場所での人とのつながりが、他の仕事にも生きていると感じます。ここで立ち上がったAIの勉強会に参加していたことで、NCVの方にも誘っていただいたんですよ。」
「NCVでは、僕よりよっぽど開発スキルを持った方が周りにいらっしゃるので、教えていただいたことをカフェの運営に生かすこともあります。今は市販のレジアプリを使っていますが、自分で作った方が良くない?となって開発してみたりですね。」
経営者と社員という、立場も職種も異なるパラレルワークですが、だからこそ互いにプラスの影響を生んでいるように感じます。
「カフェを通して勉強してきた経営的な視点から、NCVの仕事も見られていると思います。また、NCVで固定された収入があるからこそ、自由に動けるという面もありますね。塾の子どもたちが興味を持ちそうなものを、いろいろ買ってしまったり(笑)。」
時間の面では大変でないのでしょうか。
「完全に自由でもストレスになってしまうと思うんですよ。僕の場合、NCVで月・水・金とある程度時間が固定されているというのは、ストレス的には良いですね。それをベースに予定を組めますし、とはいえNCVも完全に固定ではなく、調整しようと思えばできますし。」
100%時間を自由に決められるというのは、それが向いている人ももちろんいるでしょうが、すべて自分でマネジメントしなければならない大変さがあります。大垣さんの働き方は、ご自身に最適化されているように思います。
「そうですね。本当だったら、新しく始めた塾の方に集中した方が良いのかもしれません。ただ、何故塾を始めたかというと、『こういうスキルを身につけていこう』『これは別の方面にも生かせるな』と想像して実行できる子を育てていきたいと思ったからなんです。だから自分も塾の方だけでなく、AIを勉強して実績を出していきたい。そういう意味でも、今の働き方は最適化されているのかなと思いますね。」
塾では小中学生を対象に、これからの時代を生きるための創造性や専門性を伸ばす手助けをしている大垣さん。最後に、若い方に向けてアドバイスを頂きました。
「起業の話となると、学生のうちからした方が良いとか、社会人として経験を積んでからの方が良いなど、『いつ起業するべきか』という話はよくあります。でも逆に、『どのタイミングで社員になるべきか』という話はあまり無いんですよね。」
「僕は、起業してから社員になる方が絶対に良いと言っています。そうでないと、何故こういう仕事をするのかイメージできないまま入ってしまいますし、経営的な視点や俯瞰的な視点がないまま、言われたことをやるだけになりかねません。その延長として、たとえばパラレルワーカーとなればいろいろ繋がっていくことがあるでしょうし、自分の得意や好きを武器としていくことができます。あくまで選択肢のひとつとしてですが、学生のうちからでもできることはあると思いますよ。」
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