ストーリーズ #015
公務員×団体運営×非常勤講師
後藤好邦さん
地域:山形県山形市タイプ:パラレルキャリア公務員
山形市役所に勤務するかたわら、自治体職員を中心に学び合う「東北まちづくりオフサイトミーティング(OM)」を創設し、運営委員を務める後藤好邦さん。
自治体という枠組みを越えた新しいネットワークを立ち上げると、東北各県から多くの公務員を中心とした人たちが賛同し、登録をしました。現在では1,000人を超える大所帯です。
東北まちづくりオフサイトミーティング(OM)のイベントより
後藤さんは、数々のメディアや書籍で紹介され、2020年10月には『自治体職員をどう生きるか-30代からの未来のつくり方』(学陽書房)を出版するなど、知る人ぞ知る” スーパー公務員”。しかし、そんな後藤さんでも、初めから高い志や理想を抱いて公務員を選んだわけではありませんでした。
「公務員になった理由は、『安定しているから』と親から勧められたことと、利益重視よりは社会に役立つような仕事がいいなと思っていたという程度で、あまり深い意味はありませんでした。」
ターニングポイントとなったのは、市役所に勤務して10年目のこと。市役所の仕事を総合的に評価・検証する業務「仕事の検証システム」に携わったことでした。
「仕事の検証システムの評価委員会の委員長だった関西学院大学の石原教授に誘われて、全国の公務員有志が集まる勉強会に参加したんです。ちょうど仕事に対して自信がついてきた頃だったのですが、その会に参加して、自分のレベルの低さを思い知らされました。正直凹んで『もう行かなくていいかな』と思ったのですが、話についていけていない自分を気遣って声をかけてくれる人がいて、その人がいたからその会に参加し続けたんです。そうしているうちに、だんだんと『ここは意気消沈する場ではなくて、自分の仕事の質を高めるための学びの場なんだ』と、前を向くことができるようになりました。」
「自分が学ぶことで市役所の仕事に活かされる」と考えた後藤さんは、翌年、教授とともにイギリスの行政を視察訪問。その後、より知識を得るために東北公益文科大学院に入学し、自治体職員の仕事の本質を深堀りするように、プライベートの時間を利用して学びを深めていきました。
イギリス視察訪問の仲間とともに
そして、東北の自治体職員とお互いの仕事について話し合い、仕事の質や意識を高め合うような場を作りたいと、岩手県北上市の職員とともに「東北まちづくりオフサイトミーティング(OM)」を設立しました。
それは、これまで横のつながりがほとんどなかった自治体職員の交流の場。お互いに事例や意見を持ち寄り語り合うことで、仕事の質の向上やモチベーションアップにつながっていったと言います。
「山形市役所に就職し、仕事の検証システムを担当してから経験したことが、すべて自分の今につながっています。間違いなく、大阪で勉強会に参加したことが起点で、そこから始まっていると感じています。石原先生と、その勉強会で声をかけてくれた人が、自分のキーマンですね。」
自分からアクションを起こしたことで、さまざまな人と知り合い、自分の住む地域の活動にも積極的に関わるようになった後藤さん。「西山形の酒を造る会」や「やまがたイグメン共和国」、「地域に飛び出す公務員ネットワーク」など複数の団体に所属中です。
酒米づくりから酒の販売までを地域住民でおこなう「西山形の酒を造る会」
「パラレルワークというよりは、パラレルキャリアという言葉で表現している方がいて、自分はまさにそれだなと思います。いろいろなネットワークでの関わりから公務員の仕事の価値を再認識したり、新しい気づきがあったりします。だから、自治体職員こそパラレルキャリアを取り入れてほしいですね。
ただ、それは『自分が好き』と思えるから続けられることなので、他人から押し付けられるものではありません。何を選ぶかを自分で決めればいいと思います。」
後藤さんのポリシーは、本業を「ちゃんとする」こと。早朝に”朝活”と称して執筆や段取りなどをし、オンラインのイベントは夜に開催するなど時間のやりくりをしつつ継続しているそうです。
また、現在は大学の非常勤講師としても活躍中。若い世代へ自治体に関わることや地域づくりの魅力を伝えています。
「自治体職員が地域の人と関わることで得られるものは、とてもたくさんあると思います。それを若い人たちにも伝えたいのですが、自分がプレイヤーでなければ説得力がないですよね。だから私もまだまだ活動を続けますし、これからは東北まちづくりオフサイトミーティングが、地域の人と自治体職員がお互いに分かり合うためのつなぎ役になればと考えています。」
(文:海谷美樹)
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