ストーリーズ #018
地域活動×カフェ運営×非常勤講師
阪野正義さん
地域:山形県朝日町タイプ:自主事業その他の複業
山形県朝日町の住宅街に、青い暖簾が目印のカフェがあります。「喫茶&シェアスペース at LOUNGE」です。町民の交流の場という側面を持つ傍ら、チャレンジカフェとして起業を考える人に挑戦の機会を与えています。
運営するのは、一般社団法人希望活動醸成機構 代表理事の阪野正義さん。
阪野さんは2016年に地域おこし協力隊として朝日町に移住しました。ゲストハウスの運営等に携わり、協力隊を卒業する半年前に一般社団法人希望活動醸成機構を立ち上げます。
「一般社団法人を設立したのは、『自分たちが楽しむために自分たちで動こう』という流れをつくり、後押しをしていきたかったからです。朝日町は、町内で楽しめる場所というものがそこまで多いわけでもなかったので、だったら創ろう、選択肢を増やそう、と思ったのが始まりでした。」
協力隊時代から、朝日町のチャレンジさせてくれる風土が気に入っていた阪野さん。
卒業後も朝日町にとどまることを決め、at LOUNGEを開設し、朝日町からの委託事業として空き家バンク等の運営もしています。
朝日町の観光スポット:椹平(くぬぎだいら)の棚田にて
「よく、『何している人?』と聞かれます(笑)。勤めて、結婚して、家を建てて、というステレオタイプの幸せを歩んでいないので、正体不明の訳が分からない人に映るんだと思います。朝日町でもステレオタイプの考え方が残っていて、それでいて多くの方が私に興味をもって話しかけてくださるので、価値観の違いが段々と面白くなってきました。しばらく付き合いのある人でも『そんな価値観なの?阪野君』って何かの拍子に言われたりとか、そういう価値観の応酬がこの町だと起こりやすいなって。」
柔軟な思考で町民との交流を楽しむ阪野さんの元へは、町で何かをしたいという人々から日夜相談が持ち込まれます。今や、朝日町の「楽しいこと」を作る人財として、なくてはならない存在です。
(at LOUNGEで開催した夏祭りのひとコマ:山形県事業)
(子ども達の声をもとに遊び場を整備:山形県事業)
パワフルに活動される阪野さんですが、高校時代は自分の殻に閉じこもって小説を読み漁り、物事に流されがちな少年だったそうです。
「変わったきっかけは『死にかけて』ですね。」
18歳の時、特発性血気胸により生死の境をさまよいました。
肺が破れて血が溜まり、心臓などの臓器を圧迫するという病気です。あと30分手術が遅れていたら亡くなっていたかもしれないそうです。
「理由なく、生きてるっていいなって感じたんですよ。それからは、世界のいろんなことを知りたいと思う自分に生まれ変わりました。」
病気から生還した経験により、価値観が一変。「人生楽しく」を生き方のテーマと定めます。
「今日外に出て事故で死んじゃうかもしれないですから、やりたいことはやらないとって。欲張りなんですよね。人生ひとつじゃ物足りない。だから、自分が楽しく生きるにはどうしたらいいかと考えたんですけど、一緒にいる人が楽しくないと自分も楽しくないんですよね。人を楽しませることをしたい。そこから、いろんな仕事に関わっていくようになったんだと思います。」
「地方に暮らしていても多様な選択肢がある」ということを今の若者に伝えたい。生きている喜びが分かるからこそ、人生で選べる選択肢は多いほうがいいと阪野さんは語ります。
実際に若者に情報を伝える場として行っているのが、県立高等学校と東北芸術工科大学での非常勤講師です。3年目となる県立高等学校では「メディアコンテンツの活用」を、今年度から着任した東北芸術工科大学では「クリエイターのための経営学」を教えています。
学生時代に聞きたかった話を伝えることを軸に、若者に様々な選択肢を授けています。
一般社団法人の代表理事に加え、空き家バンクやカフェの運営、そして非常勤講師とたくさんの顔を持つ阪野さん。
最後に、阪野さんの目指す“これから”を伺いました。
「地域の楽しさを生み出す仕事って大事なんですけど、自分たちが楽しくやっていないと、後の世代が生まれないんですよね。子どもは見ていますから。楽しそうに仕事をしている、休日も楽しそうにしている。大人っていいなって思ってもらえるような、そんな活動を生み出していきたいです。正体不明の訳が分からない人。でもなんか楽しそうにしてるぞっていうのを魅せていきたいですね。」
(文:海谷南津子)
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しごとパラメーター
- 一般社団法人代表
- 非常勤講師・その他