ストーリーズ #019
会社員(事務)×事業プロデューサー×ママコミュニティ代表
山川唯美さん
地域:山形県山形市タイプ:オンラインメインの複業
「子どもの頃の私は、自他共に認める学級委員タイプ。といっても、いわゆる“優等生キャラ”ではなく、リーダー気質で“いじられキャラ”な子でした。」
そう語るのは、山形県内のママ向けオンラインコミュニティ「mama*jam(ママジャム)」代表の山川唯美さん。
かつて学校のクラスを盛り上げていたリーダーは今、山形県内およそ700人(2021年11月時点)のママたちが育児の悩みや地域の子育て情報をシェアする場を取りまとめています。
そんな山川さんの主業は会社員。2020年に転職したのを機に、mama*jamを含む2つの副業を手にするパラレルワーカーとなったのです。
以前はラジオ局に勤務し、10年以上にわたり、そこでの仕事に専念していました。「20代で学ぶべきことは、すべて前職で学んだ」というほど、充実した社会人生活だったそうです。
では、なぜ転職・パラレルワークに踏み切ったのか。きっかけは、在職中に取得した育児休業期間中の孤独の先にありました。
「育児の悩みって、どこまで友人に相談していいものかわからなかったんです。だからといって、新たなママ友の輪に割って入る勇気もなくて…。結果的にスマホに頼り、匿名のネガティブな投稿を見ては落ち込むばかりでした。」
「相談しやすい環境を自分で作ろう」と考えた山川さんは、先輩ママの友人たちを誘って、承認制・非公開のFacebookグループを立ち上げました。そこに自分の悩みを投稿し、コメント欄でアドバイスをもらう——そんなmama*jamのベースとなるシステムを構築したのです。
「Facebookなら実名登録が基本だし、リアルな情報がもらえる。気を遣わず、相談し合える場になると思ったんです。少人数で始めたんですが、『地域のママたちにも広めてみたら?』というメンバーの声があり、仲間を増やしていくことにしました。」
(mama*jamの運営を支える事務局メンバー)
2019年4月、mama*jamを正式に発足。県内最大規模のオンラインコミュニティへと成長させていきました。行政機関・他団体からも注目され、様々なプロジェクトを業務として受託することも増えていったといいます。
「その都度、メンバー内でチームを作って対応し、委託費を分配しています。mama*jamは今や情報交換の場だけでなく、メンバーの活躍機会を創出する場でもあるんです。」
(やまがた社会貢献基金協働助成事業では、山形県立図書館の利活用について企画を提案)
この経験は、復職後の山川さんの働き方にも影響をおよぼしました。
「世の中にはチャンスがたくさんあるということに気づいたんです。定時まで会社という“箱”の中にいる働き方ではそれらを逃してしまうし、今の自分に合わないな、と。そのとき、当時クライアントだった現職の社長が、『起業するから一緒にやろう』と声をかけてくださり、転職を決意しました。」
そして現在、山川さんは山形大学工学部発のベンチャー・株式会社BIH(バッテリーイノベーションハブ)での仕事を主業としています。担当しているのは、外国人研究者の人材育成をメインとした事務全般です。
また、副業として始めたのが、前職の経験を活かした「事業プロデューサー」の仕事です。父親の経営するエンター合同会社から業務委託を受け、企画・広告・イベント関連のプランニングやディレクション等を行なっています。
「BIHの仕事は、自宅でリモートワークが基本です。また、与えられたタスクを終えれば、残りの時間は自由。なので、私はその時間をエンターとmama*jamの業務に充てています。」
一方、リモートワークだからこそ気をつけるべきこともあるといいます。
「どうしても部屋の状態や家事が気になってしまうので、自分の決めた仕事時間中はなるべくデスクにつくことをルール化しています。在宅で自分を律するのは、自分しかいないんです。」
それでも、ときには仕事が時間内に終わらず、子どもが家にいる夜間や土日におよぶことも。
「3歳の子どもから、『ママはいつもパソコン(仕事)だね』と言われ、申し訳ない気持ちになりました。残業が続くときは実家に頼ることもあります。けれど、働く親の背中を見て育ってほしいというのが本音。子ども自身も、最近は一人遊びをしながら待つなど、成長を見せてくれています。」
山川さんのパラレルワークの特徴は、3つの仕事の分野がすべて異なること。それぞれ頭の使い方が違うことから、「リフレッシュできる」「勉強になる」など多くのメリットを感じているそうです。そして、こんな魅力も……。
「mama*jamメンバーの声から他の仕事のヒントを得たり、副業の人脈を主業に活かしたりすることもあります。先日は、エンターを通じて企画・運営したイベントで、mama*jamメンバーと協働しました。」
(mama*jamメンバーとユニットを組んで開催したイベントは大成功!)
(前職のラジオ局で培った経験も、今の仕事に活かされているようです。)
「今の働き方に、まったく後悔はない」という山川さん。その一方で、「転職やパラレルワークをすべての人に勧める気はない」ともいいます。
「私の場合、前職を通じて今の社長と出会い、自分のやりたいことができる環境を見通したうえでの選択でした。それがなければ、どうなっていたかわかりません。一つ言えるのは、今目の前にいる人との関わりが未来につながるかもしれないということ。誠実なお付き合いをすることが大事なのだと思います。」
最後に、今後やってみたいことを聞いてみました。
「社長になることです! mama*jamでも代表を務めていますが、今は自分で声を上げ、自分で動いて成果を出すスタイル。本来は、実務をすべて他のメンバーに任せ、それがうまくいくよう支援する側に徹するほうが得意なんです。これからも、より力を発揮できる働き方を模索し、実現させていきたいと思います。」
常に、自分の特性を理解し、それを活かすための最適解を導き出してきた山川さん。お話を聞き、学級委員の頃のように、周囲の人たちから愛され、慕われる社長になる未来の姿が目に浮かぶような気がしました。
(文:馬島利花 撮影:佐藤俊介)
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