ストーリーズ #004

農家×スノーボーダー

高橋幸士さん

地域:山形県東根市タイプ:季節に応じて

「スノーボードをはじめた中学のときから、プロとしてやっていくことはずっと夢としてあって。まあ、プロというより、あのときの自分らの言い方でいえば "ムービースター"。映像や写真の世界で、プロ資格をもっていなくてもメーカーと契約しているのが恰好良かったんです。それになりたくて、ひたすら。」

時速80km、100kmとスピードを出す。20m、30mジャンプする。普通はできないようなことをするのが 「スノーボード」 だと話す、高橋幸士(ゆきひと)さん。山形県東根市を拠点に活動するプロスノーボーダーです。

「地元が何もないところだったんで、小さい頃から釣りしたり、雪降ればスキーしたり、そんな生活でしたね。家から車で15分くらいのところにスキー場があったんですよ。」

子どものころからアウトドアが日常だったよう。

秋田県出身とのことですが、なぜ山形に来ることにしたのでしょうか。

「スノーボードのメディアでは、東北でスノーボードといえば南東北。昔だとすみかわスノーパークが有名になったので、東北といえば山形・蔵王だし、あとは福島と宮城が強い。そのあたりの人を目標にする人はいましたね。」

憧れの “ムービースター” がいたのですね。

「まあ、たくさんいましたね。山形にもすごい人がいたんですよ。今でも現役なんですけど、自分より4つくらい年上で、世界にも通用するくらいすごい人が。でも、自分が来たときには、そういう人たちはもう海外で滑っていて。ちょっともう違う場所に行ってましたね。」

「恰好良い」と言われればそれで生きていける世界。シンプルだからこそ、厳しい世界でもあります。

そんな世界で、「楽しそうに滑る」とファンを魅了するのが高橋さんです。

「自分の映像をみて、ジャンプしなくてもこんなに楽しく滑れる方法があるんだって思ってくれる人が多いんです。ジャンプでも、台を使うんじゃなくて、ゲレンデの自然な凹凸を利用して跳ぶ方法があるんですよ。そのままのゲレンデで楽しく滑るっていうことですね。」

初心者向けの講習動画をつくれば、もっと多くの人に見てもらえるのかもしれない。けれど、自分たちがやりたいことはそれではないと言います。いかに恰好良く、爽快に、楽しく滑るか。そんな姿勢が、ファンを惹きつけてやまないのかもしれません。

東根市といえば、忘れてはならないことがもう一つ。

今回お話をおききした場所を見れば一目瞭然でしょう。


取材させていただいた場所は、これからシャインマスカットを植えるという畑。高橋さんは、さくらんぼをはじめとした果物の名産地・東根の農家でもあります。

「スノーボードがしたくて13年前くらいに山形に来たんですが、夏の間はずっと果樹のバイトをしていました。市場のバイトをしたり、農家のバイトをしたり、『さくらんぼ』というものを徐々に知っていって、自分でもやってみようかと。」

そういうわけで、2018年の春に新規就農したそうです。

山形の初夏の風物詩・さくらんぼ。忙しいときは、5時から19時までさくらんぼにかかりっきりとのこと。けれど、自分でするようになったからこそ、嬉しいことがあったそうです。

「今まではバイトだったので、自分が作ったものを『おいしい』と言ってもらう経験って味わったことがなかったんですよ。自分で栽培するようになってから、『誰だよ、この忙しいときに』と思いながら電話に出たら、『大変おいしかったです』って。正直うれしかったですね。その感覚はスノーボードと一緒。映像をみて、『すごく良かった』って言ってもらえるのと。」

他にもスノーボードと農業の共通点はありますか?

「時間を自分でコントロールできるところですね。ずっとプロスノーボーダーをやっていると、やっぱり自由じゃないですか。そこからは抜けられないかな。手伝いに行っていた農家さんたちも、今日用事があるので休みますと言うと、『いいよ、いいよ』という感じで。『今日午前中だけでお願いします』『いいよ、いいよ』っていう。」

他方で、天候には左右されますよね。

「そうですね。でも逆にそれが良いなと思います。自然のリズムが。たとえば、天気が良くてどうしても滑りに行きたい。じゃあ滑りに行く。今日は天気が悪いからこっちしよう、とか。冬になると、まわりの農家さんは『冬眠する』って言ってますが、自分はずっと天気予報見てるので、天気予報見てる率は高いでしょうね(笑)」

自然のリズムに合わせて自分で決められる生活。ストレスはないそうですが、不安や懸念はあるよう。

「仕事が1年通してあるわけではないので、そこは何とかしていかないとと思っています。シャインマスカットも実るまで3年と言われていますが、それは順調な人の話なので…。収入を増やしていかないといけないから畑も探すんですけど、東根も街が大きくなって宅地が増える代わりに、畑は減っている状態なんです。」

人口減少にあえぐ地域が多いなか、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、山形県の市町村で2030年に人口が増える予想となっているのは、なんと東根市だけなのだそう。

https://www.city.higashine.yamagata.jp/12441.html

その一方で、畑は減り、農業従事者は高齢化が進んでいます。意外なことに、スノーボード業界もなかなか若い人が入ってこなくなっているのは同じだといいます。

若い人たちに向けて、農業やスノーボードの魅力を伝えるとすれば?

やはり「自由」なところが魅力とのこと。

「自分次第っていうところですよね。やるもの休むのも。」

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「パラレルワークも、とりあえずやってみるしかないですね。失敗は成功の基って言うじゃないですか。やってみて気づいたことを修正していく。それが人生だと思うんで。スノーボードも、知らない山に行って、ひとつひとつ課題をクリアしながらやっていくんです。農業だって、去年のやり方を変えて、それで成功するかもしれない。」

一回で成功するとは限らない。むしろそういう方が少ないでしょう。でも、ひとつひとつの小さな成功や嬉しかったことが積み重なっていけば、案外続けていけるものなのかもしれません。

「スノーボードのレッスンやイベントのお客さんが、結構さくらんぼを買いに来てくれて。『はじめて見た』とか、今まであんまり気にしたことなかったっていう人が多かったんです。そういう人たちに果物を届けて、身近なものにしていければ、もっと広がるのかな。」

「わざわざ電話くれたり、買ってくれた人が『おいしい』って言ってくれたりすると、大変でも毎日頑張れる気がしますよ。」

高橋さんだったら、農業がもっと恰好良くなる気がします。

「なんだろう。趣味がいっぱいあるので、いろんなものを入れて農業やっていきたいですね。もちろん農業がメインですけど、冬はスノーボードして、あとは釣りしたり、楽器弾いたりしながら。やってる音楽がレゲエなので、まわりにも自然好きな人が多いんですよ。」

そこも繋がっている気がしますね。

農業×スノーボード。珍しい組み合わせかと思いましたが、なんだかとても「山形」らしいとも思いました。

「本当、ただ遊んでるみたいな感じですけどね。」

しごとパラメーター

  • 果樹農家
  • プロスノーボーダー

主業

副業

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